
05 4月 【メディア掲載】2017/04/05 産経ニュース「【種蒔く人々 地方創生】 (2)鹿児島県長島町前副町長・井上貴至さん」
2017年4月5日、産経ニュースの特集【種蒔く人々 地方創生】に長島町元副町長、井上貴至氏の記事の中で島TECHについてご紹介いただきました。
記事はこちらからご覧になれます。
【種蒔く人々 地方創生】(2)鹿児島県長島町前副町長・井上貴至さん – 産経ニュース
以下、転載(2017年4月5日時点)。
■高校のない島に高校生集う
「君たち、将来は何になりたいの?」
「こうむいん!」
鹿児島県でよく見た予備校のコマーシャルです。長島町の中学生の多くも、公務員や学校の先生になりたいと思っています。
私はそれに危機感を覚えました。
もちろん公務員や先生も立派な仕事です。だが島の子供は、それらの仕事しか、知らないのではないか。できる限り多くの選択肢を知った上で、仕事は選んでほしいのです。
そこで都会の大学生を定期的に招き、勉強会を開くことにしました。地元の中学生に勉強のやり方や将来のキャリアデザインを伝える「獅子島の子落とし塾」です。
「皆さんが知っている仕事について、できる限り書いてごらん」
「このペンを作る人ってどんな人? ペットボトルのデザインを考える人は? ここまで誰が運んでくるのかな」
5分間で知っている仕事を発表させると、最初は20~30の職業しか、生徒の口から出てきません。大学生が少しずつヒントを出し、生活に身近なことから、仕事へのイメージをふくらませます。
次の5分では100を超える仕事が言えました。机に職業を書いた付箋(ふせん)があふれます。
そうした職業がなぜ気になるのか、理由をそれぞれ書かせたり、そんな魅力ある職業に就くのに、今から何ができるかを議論しました。
昨年、自治体としては全国で初めて、インターネットを活用した広域通信制高校「N高等学校」(N高)を支援する拠点「長島大陸Nセンター」をオープンしました。N高とは、カドカワグループの「角川ドワンゴ学園」が設立した学校です。
長島町のNセンターは、N高が利用する双方向型の課題教育アプリを使ったネット配信を受けます。「地域おこし協力隊」と呼ばれる相談員による、自学自習のサポートも受けられます。
平成19年、町で唯一の高校が閉校になりました。そこで、町に居ながらにして安価な費用で、高卒の資格を取得できる選択肢を提供しようと考えたのです。
実は、Nセンターは全国の「N高」の生徒が集う拠点にもなります。N高では主要5教科に限らず、プログラミング講座や文芸小説の制作など、カドカワグループの力を結集した教育を受けられます。
ただ、ネット上では農業や畜産業、水産業といったリアルな仕事の現場は学べません。それを補完するのが、長島大陸Nセンターです。同級生は全国の高校生です。昨年11月には第1回「島TECH」と呼ばれるイベントを開きました。
福岡からも、滋賀からも、もちろん長島町内からも高校生が集結しました。
5泊6日で町にある石元淳平醸造の社長宅にホームステイし、商品の公式ホームページも制作しました。
仕事のプロの話を直接聴き、仕事の段取りを考える。そして、コミュニケーションを図り、マーケティングを実施する。情報通信技術(ICT)もマスターする。この先、社会で求められる力が「島TECH」を通じ、自然と身に付いていくのです。
「こんなことをやってみたいなといえば、すぐにその道のプロに電話でつないでくれる」
島TECHは人と人とのつながりが強い「長島大陸」だからこそ、できた取り組みです。高校生の真剣に学ぶ姿に、大人の側にも新たな挑戦心が生まれます。高校生を見て、中学生にも選択肢が増え、可能性が広がります。
高校のない町だからこそ、最先端の教育で高校生を集めたい。全国にファンを増やし、高校生らと一緒に成長する地域であり続けてほしい。
私は3月いっぱいで長島町を離れましたが、心からそう願っています。
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